家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「ん……」

 ふわっと良い香りが鼻をくすぐり、明莉は覚醒した。

 まぶたを開ければ、見慣れない部屋が目に映る。

 あたたかな布団にくるまって眠っていたのも思い出した。

 この布団には、普段あまり感じない匂いがついていることも。

 もそっと動いて、上半身を起こす。

 意識がもっとはっきりしてくれば、見慣れないのは、あまり過ごしたことがない部屋だからだとわかった。

 美花の家だ。

 美花の家は1DKなので、居室はここだけだ。

 よって、昨夜はベッドを借りて……。

「あ、おはよう。明莉」

 そのとき、ガチャ、と音がしてキッチンへ続くドアが開いた。

 明莉がそちらを見ると、すでに着替えをしたようで、仕事着姿の美花が入ってくるところだ。

「あ……おはよ……」

 まだ少しぼんやりする意識で、挨拶をする。

 美花は静かにドアを閉めて、明莉に近付いてきた。

「よく眠ってたね。疲れは取れた?」