家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「……そっか。それは怖かったね」

 一時間ほどあと。

 明莉はあたたかな部屋と、安心できる人の元にいた。

 小さなマンションの一室で、明莉をしっかりと抱きしめてくれるのは美花だ。

 仕事上がりのオフィスカジュアルの格好をしている。

 リビングのクッションの上で、コートも脱がないままの明莉を抱きしめ、軽く撫でてくれた。

「ごめんね、こんな急に……」

 ようやく安堵できた明莉は、涙声で美花に謝った。

「なに言ってるの! 明莉の安全のほうが大事だよ」

 なのに美花は優しいことを言ってくれる。

 安心させるように、明莉の背中をまた撫でた。

 タクシーで逃げ出した明莉が向かったのは、美花の会社だった。

 自宅マンションはもちろん圭二に把握されているだろうし、一人でいるのは危険だ。

 実家も同様である。