家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「わ、わかりました」

 タクシーはすぐに発進された。

 圭二のいた場所から遠ざかる。

 走る車内で、明莉の体はがくがくと震えていた。

 恐ろしさがようやく身に染み入ったのだ。

 頭の中も痺れていた。

 酷いことを要求されたが、今はまだ考えないほうが良いと思った。

 とにかくここを逃げて、安全な場所へ行ってからのほうが良い。

「大丈夫ですか……? どちらへ行きましょう? 警察とか……」

 数分走ったあと、運転手が優しく聞いてくれた。

 明莉は少し考えて、「いえ」と答える。

 確かに警察に行ったほうが良い。

 でももう少し気持ちを落ち着けたかった。

 よって、明莉がお願いしたのは、今まで何度か行ったことのある、『安全そうな場所』だった。