家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 大通りへ飛び出した明莉は、すぐ近くにタクシーが停まっているのを見付けた。

 ちょうど駅前であることもあり、通ることが多いのだが、目の前に見付けられたのは天の助けだと思った。

「すみません! 乗せてください……!」

 走り寄り、窓越しに運転手に鋭く声をかけた。

 運転手は明莉のただならぬ様子に焦ったようで、すぐドアを開けてくれる。

 明莉は転がり込むように乗り込んだ。

 後ろでは圭二が立ち尽くすのが感じ取れた。

 今、無理やり明莉に近付けば、タクシーの運転手がさすがにおかしいと気付くだろう。

 通報されるかもしれない。

 そう思ったらしい。

「ど、どちらへ……?」

 運転手も只事ではないと思ったらしく、おろおろと聞いてくる。

 明莉は震えそうな体を抑えながら、言った。

「とにかくここを離れたいんです!」