家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 明莉の胸に、嫌悪感まで追加された。

 胸が冷たくて、心臓を握られたように気持ちが悪い。

 もう限界だった。

「そ、……んなこと、する、わけ、ない……!」

 絞り出すように言った。

 声は明らかに震えたけれど、少しでも言葉を発せたことで、明莉の体はやっと動いた。

「んだよ、度胸のないやつだな。それなら……」

 明莉がなんとか言い返した言葉に、圭二はにやっと笑った。

 それでさらに酷いことを言おうとしたのだろうが、もうこれ以上は無理だった。

 明莉はパッと身を翻す。

 路地を戻るルートで、大通りに向かって駆け出した。

「お、おい! チッ……」

 いきなり走り出した明莉に、圭二は面食らったようだった。

 後ろから焦った声が聞こえる。

 明莉は必死に足を動かした。

 妊娠している身で走るのは危険だが、この場に居続けるほうが危険だと、よく理解できたのだ。