家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 実際、それは正解だった。

 彼はそっとニット帽を取る。

 そこに見えたのは、見慣れた顔立ちの男性だ。

 長身の黒髪という容姿で、以前より痩せたように見えたが、確かに圭二であった。

「久しぶり」

 圭二は真っ直ぐに明莉を見て、端的に言った。

 明莉の胸に、警戒が溢れる。

 こんなひと気のない路地で、しかも過去に二度、目撃情報を耳にしたあとに出会って、穏便な用事ではない気がした。

「な、なに? 今さら、なんの用?」

 それでも明莉は自分を奮い立たせた。

 真っ直ぐに立って、お腹から声を出した。

 その明莉に対して、圭二は笑みを浮かべる。

 でもその笑みはどこか薄暗くて、以前、明莉が何年も見ていたものとはまったく違っていた。

 強いて言うなら明莉を捨てたあの日の表情と、近いものに見えた。