家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 巳影は嬉しそうに微笑み、もう一度、今度は明莉のくちびるにキスをする。

「いってきます」

 それでボストンバッグを持って、出ていった。

 明莉は玄関で小さく息をついてしまう。

(やっぱりちょっと……寂しいな)

 以前から『独りきり』は苦手なのだ。

 孤独や心細さを感じてしまう。

(ああ、そんなことないよね。今はお腹のこの子が一緒だもの)

 でもそこで思い直した。

 そっとお腹に手を当てる。

 ざっくりとした白いニットワンピース越しに、軽くお腹を撫でた。

 もうあと三ヵ月ほどで生まれてくる予定なのだ。

 巳影もそのときを楽しみにしてくれている。

(さて、軽く家事を済ませておこうかな)

 気持ちを切り替えるために明莉はそう思い浮かべて、室内へ戻った。

 だがこの巳影の出張が、悪い出来事のきっかけだなんて、このときは思いもしなかった。