家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「うーん……帽子をかぶってたから顔はよく見えなくて……。ごめんなさいね、不安だけ煽るようなことを言って」

 でも母の答えは曖昧だった。

 明莉も悩んでしまう。

 普段から見かけるわけではないから、ストーカーという可能性は薄そうだ。

 ただ、なにかしら明莉を気にかけている存在がいるらしい。

 しかも男性のようだ。

 それは不安になってしまう。

「巳影くんがいるから大丈夫だと思うが、少しでも気になることがあったら、父さんや母さんにも話すんだぞ」

 父もちょっと眉を寄せて、そう言ってくれた。

 頼もしい言葉だったし、『巳影くんがいるから』の部分には余計に安心できた。

 そうだ、自分は一人ではない。

 なにかあれば、巳影が守ってくれるだろう。

 なにより明莉を大切にしてくれる巳影なら、きっとそうだ。

 明莉には確信があった。

「うん! ありがとう」

 だから少し落ち着いて返事ができた。

 それからしばらく過ごし、夕方になる頃には父が車で送ってくれた。

 今日は家の周囲にも、着いた自宅のマンション近くにも、おかしな存在は特に見られず、明莉は安堵した。

 だけど生まれてしまった小さい不安は、消えることがなかった。