家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 たっぷりと張られたお湯に足を浸ければ、優しいぬくもりに包まれる。

 湯加減もちょうど良く、心地良さに、ついため息が出た。

「気持ちいい……足が天国……!」

 明莉も同じように思ったようで、言葉通りの声と表情になる。

 心から幸せそうな様子を見て、巳影は明莉の様子からも、幸せを覚えられた。

「気持ちいいなぁ」

 同意する声は、きっと明莉と同じ響きになっただろう。

 お湯を堪能するうちに、声がかかった。

「お待たせいたしました。お茶とお菓子でございます」

 足湯とセットで、飲み物を注文していたのだ。

 お盆を手にしてやってきた高齢女性のスタッフが、優しい笑顔で、二人の横に膝をつく。

 お盆にはふたつの湯呑みと、小さなようかんの入った小皿が乗っていた。

「ありがとうございます! 良い香り……」

 湯呑みから漂う紅茶の香りに、明莉はすでに顔をほころばせた。

 まだ手にも取っていないのに香りを察知するあたりに、彼女の個性を感じられて、巳影は優しい気持ちになる。