家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「とっても美味しい! 秋の味覚だね」

 出てくる料理の中で、明莉が特に気に入ったのは、秋刀魚の塩焼きだ。

 ふもとの海で獲れるのだと、女将が説明したものだ。

 きっと新鮮なのだろう。

 塩の味わいだけで美味しかった。

 明莉のために生ものは抜いてもらったが、焼き魚に小さな鍋料理、炊き込みご飯……と、料理は十分に堪能できた。

「美味しかった! 素敵なお店を予約してくれてありがとう、ミカくん」

 お腹がいっぱいになって食休みをする間、明莉は満足そうな顔だった。

 丁寧にお礼を言ってくれる。

 そう言ってもらえたら、巳影まで嬉しくなってしまう。

 宿も料亭も、明莉に喜んでもらいたくて選んだのだ。

 明莉の素直な言葉は、とても魅力的だ。

 巳影の好きな一面である。

 そんな彼女と夫婦になれただけではなく、こうして二人で……いや、お腹の子とも共に旅行ができる幸せを、すでに噛みしめてしまった。