家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 和風建築のこの旅館は明治時代からあるそうで、どこも年季が入っている。

 建物も内装も設備も、丁寧に手入れをされており、落ち着いて過ごせそうだった。

 身軽になった二人はまず、食事を摂るために外へ向かう。

 歩いて行ける距離の料亭に予約をしていたので、そちらへ向かった。

 料亭も昔ながらの建物だ。

 木の風合いが優しい雰囲気の店内の、個室へ通された。

「綺麗だねぇ……山だから、もう紅葉まで見える!」

 大きな窓から、紅葉の山と、下に広がる街が一望できる部屋だ。

 席も掘りごたつタイプであるために、明莉もお腹に負担がかからず過ごせそうだと巳影は安心した。

 ファーストドリンクは二人ともノンアルコールを選び、やがて料理がスタートする。

 料理は食べるスピードに合わせて、一品ずつ出てきた。

「きのこに栗……秋らしいメニューだね」

「ああ。どれも凝っているな」

 前菜はきのこと野菜を炊いた料理だ。

 栗の甘露煮も添えてある。

 煮物は出汁がたっぷり染みていて、秋の味が存分に楽しめた。