家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 先に自分の分を払い、すでに出口のほうへ向かった美花を追おうとしていた明莉は、彼女の言葉に反応して、振り返った。

 彼女はオーダーを取ってくれた女性店員だ。

 なぜか少し不安そうな顔をしているので、明莉は疑問を覚えた。

「なんですか? お金、足りなかったとか……」

 それしか思い当たることがなくて聞いたのだけど、彼女が言ったことは違っていた。

「いえ……。えっと、言って良いのかわかりませんが……。少し変わったお客様がいらして……」

 気が引ける顔で、小声になった彼女が、チラッと出口のほうを見て言った。

 明莉は首を傾げる。

「男性のお客様だったんですが、お客様とお連れ様の、後ろのお席を指定されまして。それでなにをするでもなく、チラチラうかがっていたように見えて……。もうお帰りになられましたけど」

 彼女はさらに言いづらそうに、そう説明した。

 明莉はちょっとドキッとした。

 なにか、変なことでもありそうな言い方だ。

「すみません! プライベートなことですけど、あなた方が女性なので気になって……、なにもなかったらすみません」

 接客業としての立場と、お客の女性を心配する立場で迷ったのだろう。

 最後に軽く頭を下げてきた。