家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 やがて美花は明莉の体を離して、「気が逸っちゃった」と照れ臭そうに言いつつ、向かいの椅子に腰掛けた。

 座り直した明莉も、くすくす笑ってしまう。

 少しずれてしまったカーディガンの襟元も摘まんで、直した。

 今日はレースのカーディガンと、チェック柄のロングスカートという格好だ。

 二人が来たこのカフェは、明莉の家から徒歩数分のところにある。

 白い壁に現代アートが飾られて、テーブルは金属、椅子は黒い布張りのソファだ。

 トータル的に現代的な内装のカフェで、ナチュラルな雰囲気を好む明莉は最初、外観を見てもあまり興味がなかった。

 でも一度入ってみたら料理もスイーツも美味しくて、気に入った店である。

 家から近いことも手伝って、ここで会うことに決めた。

「素敵なお店だね。……あ、私はアイスコーヒーをお願いします」

 初めてここに来る美花は、メニュー表を眺めたあとは興味深そうに内装を見ていたけれど、そこで店員がやってきた。

 まだ若い女性の店員に向かい、美花はメニュー表を指差して、注文する。

 明莉のほうはもうドリンクをオーダーしていたので、それを見守った。