家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 それ以来、心の中は幸せでいっぱいだったものの、明莉が妊娠をはっきり自覚したためか、体調のほうは少し崩れてしまった。

 元々、つわりが始まるような時期だったのだ。

 気分が悪い日が増えたし、酷いと吐き気で起き上がれないときもある。

 ただ、ここは再就職の活動を始める前であったことが幸いした。

 もちろんこんな状況で就職ができるはずもない。

 巳影は「体を一番の優先事項にしてくれ」と言ってくれたし、ひとまず無事出産できるまで、仕事については考えないことにした。

 そう言ったように、巳影はほかの点でも明莉をよく気遣ってくれた。

 早く帰る日がさらに増えたし、吐き気で食事を用意するのも辛くなった明莉に代わって、料理も始めたくらいだ。

 ただし、仕事をしながら毎日作るのは、初心者にとっては無理だ。

 だから買ってくる日もあったし、作ったとしてもあまり綺麗には出来上がらず、「人に食べさせられるレベルじゃないけど……」なんて気が引けた様子になることもあった。

 でも明莉は、そんなことはなにも気にならなかった。

「その気持ちが嬉しい」と心から言って、食べられる日はできる限り食べるようにした。