家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 ドキドキが強くなるのを感じているうちに、「泉谷さん!」と呼ばれた。

 だいぶ慣れた自分の新しい名字に反応して振り向くと、看護師が近付いてくるところだ。

「今日のお母様のリハビリ、そろそろ終わりますよ」

 どうやら終了時間を教えに来てくれたようだ。

 明莉は色々と考えてしまうのが一旦、中断されることにほっとして、立ち上がった。

「ありがとうございます」

 返事をして、看護師に近付く。

 リハビリが始まってしばらく経つので、背の高い中年女性である看護師とは、もう顔見知りだ。

 彼女は明莉を先導するために歩きながら、笑顔で話してくれた。

「森本さん、頑張っておられますよ。『早く自力でなんでもできるように戻りたい』って」

「お母さんが……。はい。私もそうなれば安心です」

 前向きな会話をしながら、リハビリの部屋へ向かう。

 ちょうど今日の分が終わったところで、息をつく母と顔を合わせれば、安堵が生まれた。

 母を送っていった帰りには、ドラッグストアに寄ろうと思っていたけれど、ひとまず母を労う優しい会話を交わした。