家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 その夜、話した通りに辰巳が家へやってきた。

 帰宅した巳影は、明莉と共に彼を迎える。

「ありがとうございます、おじいさま。こんな立派なお裾分けを……」

 辰巳が用意して、使用人が渡してくれたものは木箱だった。

 受け取り、中を見た明莉は、目を丸くした。

 感嘆の顔になったくらいだ。

 中身のメロンはかなり高級品のようだ。

「いやいや、私の気に入りの産地で採れたものだ。巳影と明莉さんにも味わってほしくてな」

 リビングのソファに腰掛けた辰巳は、しわの多い顔で、にこにこしている。

 今日は向こうも仕事をしていたようで、スーツ姿だ。

 英国風のデザインのスーツは洒落ていて、彼の趣味の良さをうかがわせた。

 昔から巳影は『祖父と似ている』と言われて育った。

 実際、辰巳の容姿は歳を取った今でも、巳影となんとなく似ている雰囲気がある。

 目元はしわが刻まれているものの、切れ長の綺麗な形をしているし、髪質も似ている。

 今はほとんど白髪になっているが、昔は巳影と同じ黒髪で、綺麗な色をしていたものだ。