家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 この発言と視線で、巳影は指摘された内容を一瞬で理解する。

 つい先日から、デスクにデジタルの写真立てを置いたのだ。

 今、表示されているのは巳影と明莉が、婚姻届を持っている写真だった。

 写真の中の二人はとても幸せそうな表情だ。

 撮ったものを最初に見たとき、巳影はちょっとくすぐったくなったくらいである。

「ああ、そうかもしれない。だが過去より現在のほうがずっと良い。そう言い切れるよ」

 高城からの指摘にもくすぐったくなりつつ、巳影はそう答えた。

「それはなによりです。社長がそうあるのが一番ですから」

 高城はそのように返してくる。

 普段、真面目な硬い表情でいることが多い彼女だが、今だけはほんの少し、目元が緩んでいた。

 優しいその受け止めに、巳影の心はほわっとあたたかくなった。

 祖父や祖母といった身内以外にも、優しく見守ってくれる人は確かにいるのだ。

 そう実感できて、幸せな気持ちは余計に強くなった。