家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

 ここを読んだ巳影は、ちょっと目元をほころばせてしまう。

 仕事に関しては厳しい祖父だが、こうして今でも巳影のことを家族として大切に扱ってくれる。

(休憩に入ったら返信をしよう。家へ来ると言うなら、まず明莉に相談をしないと……)

 読み終えて、タブレット端末を閉じた。

 そう考えながら、荷物をまとめて、仕事用のバッグに入れる。

 退室の支度がすべて整い、バッグは高城が持ち上げた。

「さて、では休憩だ。高城さんも、少し休んでくれ」

 二人で会議室を出る。

 高城が施錠をして、連れ立ってエレベーターに向かった。

 巳影の言葉に、高城は笑みも浮かべずに、お礼だけ返した。

「ありがとうございます」

 でもこれが彼女らしい態度だ。

 どこか淡々としている彼女はまさに、仕事人間という様子だが、その仕事への真面目な取り組みに、巳影はずっと助けられていた。

 しかしエレベーターで最上階へのぼり、社長室に着いてから、高城がふと言った。

「社長、本当に変わられましたね」

 バッグを定位置に置いた彼女の視線は、巳影のデスクに向いていた。