家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています

「少し休憩して帰ろうか? 甘いものでもどうだろう?」

 今日は自分で運転する愛車に乗り込んだあと、巳影は明莉に向かって提案した。

 でも明莉の返事は少し濁る。

「うーん……。今日はすぐに帰りたいかな。あまり甘いものの気分じゃなくて……」

 それを聞いた巳影は、軽く眉を寄せた。

 ここ数日、明莉はこのような様子だ。

 甘いものが好きな彼女らしくもない。

 普段、巳影がスイーツでも持って帰れば大喜びして、幸せそうな顔で食べてくれるのに。

 婚姻届を出した直後というめでたい日なら、特に喜んでくれると思ったのに、不思議なことだ。

「わかった。体調でも悪いのか?」

 シートベルトをかけたあと、車を発進させた。

 前を見ているから明莉のほうは見られないが、心配で聞いてみる。

 でもこれも明莉の返事は、はっきりしなかった。

「夏バテかも……。どこかすっきりしない感じなの」

 そんなふうに説明する。

 どうやら彼女も自分の不調をよく把握できていないようだ。

 ただ、もう真夏になり、毎日暑い中なのだから、夏バテという可能性は大いにある。

 だから巳影も心配だったが、頷いた。

「そうか。それなら余計に涼しいところにいたほうがいい。真っ直ぐ帰ろう」