林檎 -ringo- ①

あっという間に放課後になった。



文化部は部活がない日だから、
紗羅と一緒に帰ることにした。


「どうだった?新しいクラス。ウチは理華と舞子がいるから最高だけど…。気になる人とか、いた?」



紗羅と喋りながら校門を出ると、
テニスコートが目に入る。


「気になる人、か…。」


テニスコートのほうに視線をやると
テニスの練習をしている皓太が目に入った。


走って、ボールを受けて、
ラケットで力いっぱい打ち返す彼。



「ナイスーーッ!!」



他の部員にも
熱い声援を送る姿。




風で揺れる テニスコートに立つ桜の木。


舞い上がった桜の花びらが


皓太のキラキラした姿を印象付ける。




彼の、テニスやその仲間に対する情熱が

確かにそこにあった。



そんな皓太の姿に

思わず見入ってしまう。


それを横目で見ていた紗羅は、
「ふーん、皓太が気になるんだあ…。」

と察していたけれど

皓太に惹かれ始めていた私の耳には

紗羅のその声は届かなかった。





「コラ!無視しないでよ!帰るよ!」
紗羅は私の肩をぺち、と叩くと

私は「はっ、」と
我にかえった。


「ごめん、ボーッとしてた。」


紗羅はそんな私をみてニヤッと笑い

さて、歩きながら聞かせてもらおうか?

と言いたげな表情を浮かべて

「行くよ!」と私の腕をひっぱり



私たちは帰り道を歩き始めた。



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「…で、皓太なんでしょ?気になる男子って。」


「気になるっていうか…
なんか、他の男子と違うなって思って。
明るくてさ、話してて…嫌じゃないっていうか。」



そう。別に好きとかそういうのじゃないし。

ただ「友達」として、惹かれるっていうか

それだけだから。



でも紗羅は
「それさあ、もう好きじゃん。」
って、決まりきったように言う。




「いや、別に!好きとかそういうのじゃないし!てか、今日初めて喋ったばっかだし!」


「ふーん…まあいいけど。
じゃあ、もしホントに好きになったらさ、
ちゃんとウチらに言うんだよ?
ウチら親友だし、ちゃんと協力するからさ!」


「あ、ありがとう…。でも、ホントにそういうんじゃないから!」








家に帰ってからも


私は皓太のことが頭から離れなかった。



初めて喋った。

初めてテニスをしている姿を見た。

思えば彼は、私が中学生になってから、
初めて私に笑いかけてくれた男子だ。






ハッキリ言って、すごくかっこよく見えた。



「これが恋…なのかな。」


あっという間の1日だったけど

私の心の中で


何かが動き出したみたいだった。