ある夏の日。
天気予報が外れた。
帰ろうとすると、土砂降りの大雨が降っている。
仲の良い友達がいるわけでもない。
彼氏がいるわけでもない。
こういう時に限って、折り畳み傘すら持っていない。
かと言って、昇降口で止むのを待つのも時間が勿体無い。
呆然と立ち尽くしていると、左側から黒の折り畳み傘が視界に入る。
見上げると、思いもしない人物がいた。
目黒先輩だ。
人違いではないでしょうか。
私に差し出す物ではない。
呆気にとられていると、
「この土砂降りじゃ意味無いかもだけど。びしょ濡れで帰るよりマシだと思うよ。良かったら使って?」
と、言ってきた。
奇跡が起きた。
目黒先輩に声をかけられるとかいう、奇跡が。
とんでもなく間抜け面を晒してる気がする。
恥ずかしい。
頬が熱くなる。
「俺のことは気にしないで?ね?」
私に無理矢理傘を押し付けて、リュックを頭に乗せて走って帰ってしまった。
「あっ…」
大きい傘があるとかでもないの?
だとしたら何で…?
私はとりあえず、貸してもらった傘を丁寧に扱うのを心がけながら差した。



