嘘つきな患者と、私の先生。

正直、来る気はなかった。



「人数足りないから頼む」

そう言われて、仕方なく来ただけ。



合コンなんて、興味ない。



適当に座って、適当に終わらせるつもりだった。



そこに、あいつが来た。



「ほんとに来ちゃった…」



小さく呟きながら入ってくる。



(帰りたそう)



第一印象、それ。



無理やり連れてこられたのが丸わかり。



席についても、

周りに合わせてるだけ。



「ジュースでいい」



即答。



(飲まないタイプか)



それならいい。

そう思ったのに。



「一杯だけ!」



(……めんどくさい流れ)



断りきれずに飲むのも、分かる。



でも。



(やめとけよ)



思った時には、もう遅い。



2杯目。



3杯目。



顔が少し赤い。



目もぼんやりしてる。



(飲みすぎ)



「飲みすぎじゃない」



思わず口に出る。



「へーきだし…」



全然大丈夫じゃない顔。



(分かりやすい)



そのとき。



空気が変わる。



「……あれ」



一瞬で分かる。



(発作)



呼吸の仕方。

顔色。

肩の動き。



全部典型。



なのに。



笑って誤魔化そうとしてる。



(隠す気か)



バッグを開ける。



薬。



しかも市販。



(最悪)



みんなの前で飲もうとする。



「待って」



反射で手を掴む。



「それ、何の薬」



「ただの〜…くすり…」



(分かってない)



「見せて」



取り上げる。



やっぱり。



(対処として甘い)



「これで抑えてるの?」



「んー…いつも…」



(いつも、か)



その時点でアウト。



「発作出てるよね」



「だいじょぶ〜…」



(大丈夫なわけない)



「大丈夫じゃないでしょ」



つい強くなる。



でも。



止めないとまずい。



「軽くても同じ」



逃がさない。



「その薬、ちゃんと分かって使ってる?」



適当な返事。



(やっぱり)



「市販で誤魔化してると悪化するよ」



言いながら。



少しだけ、苛立つ。



(なんでちゃんと来ない)



「病院嫌い」



その一言で、少しだけ止まる。



(……そういうタイプか)



だからって放置する理由にはならない。



「今だって対処できてない」



「水、飲んで」



拒否される。



でも。



ここで引いたら終わり。



「飲んで」



少し強める。



「……」



渋々飲む。



(最初からそうしろ)



でも。



少しずつ戻ってくる呼吸。



(とりあえずセーフ)



「ほんと、無理しすぎ」



思ったまま口に出る。



「してないし…」



(してる)



「その強がり、全部バレてる」



自覚ないのが一番厄介。



そのあとも、

何度も「大丈夫」って言う。



(信用できない)



この時点で決まる。



(放っとけない)



理由は分からない。



ただ——



このまま帰したら、

また同じことする。


それだけは分かる。



視線が合う。



少しだけ不満そうな顔。



(……ほんと分かりやすい)



なのに。



目が離せない。