天使と悪魔の恋煩い

「け、怪我してる!!」

「ああ、はい」

ああはいじゃないでしょ。

ニコニコ満面の笑みを浮かべる杏耶くんの腕からは、結構な量の血がぼたぼた垂れている。

「なんで、いつ、どこで⁉︎とりあえず止血しましょう!!」



処置を終え、杏耶くんに事情を聞くと。

「椿さんどうせここでも保健委員やってると思って。保健室行けるのは怪我人だけでしょ?」

私は中学の時も保健委員だった。

そんなしょうもない理由で、あなたは自分を傷つけられるというのか。

「自分でやったんですか?」

私の怒りを含んだ声に、杏耶くんは顔を上げた。

「…怒りました?」

不安に揺れる声で問い、私を見つめる姿はまるで子犬のようだ。

「当たり前でしょう」
私はあえてピシャリと言った。

「自分を大切にしなさい」

割と本気で怒ったつもりだったのに、杏耶くんはくすぐったそうに、それはもう嬉しそうに笑った。