初恋が終わらないのは、菖蒲くんのせい

「ということで、テーマは“初恋”!くじ引きで決まった運命共同体の五人で、一ヶ月後の〆切までに一つのポスターを作ってください。そして一ヶ月後のプレゼンをもとにして皆さんの配属を決定します」


新人研修担当の(あずま)さんが、男性にしては整った字体で大きく“初恋”という文字をホワイトボードの真ん中に書いた。


「それでは残りの時間はチームの時間として使ってください」


東さんの言葉を合図に、先ほど作ったグループで固まっていた社員たちがザワザワと話し始める。


四月。夢見ていた広告会社に勤めてから、まだ数日しか経っていない。

広告会社の中でも部署がいくつかにわかれていて、新人社員の配属は入社してすぐに行われる新人研修コンテストによって決められる。

新人研修コンテストでは、五人一組のチームにわかれて一つの広告ポスターを実際に作り、それぞれプレゼンを行う。

一位に輝いたチームにはそれなりの景品もあり気軽なコンテストとなっているけど、今後の人生に関わる部署決定も兼ねているため重要なスタート地点となっている。

優勝すれば自分の実力も同時にアピールすることができるし、それはそれは毎年盛り上がるそうだ。


「まずは自己紹介からするか?俺の名前は朝倉圭吾(あさくらけいご)だ。同期だし同じチームになったのも何かの縁ってことで、気軽に接してくれると嬉しい」


私の前に座っていた大柄な短髪の男性が、人懐っこそうな笑顔で片手を上げながら自己紹介をした。


「私は神谷麻里香(かみやまりか)。大学ではまりりんって呼ばれてたけど、まあ呼びやすいように呼んでください」