光王子と月夜のシンデレラ

「いっ今宮くん!隠れないと……」
「この制服だから大丈夫だって」
「あっそうでした」

「それでさーウケない?」
「アハハー!」

この声の感じ……この学校の生徒だ。

「生徒だと逆にバレちゃいませんか?私たちのこと知らないって……」
「学年違うフリすれば平気でしょ」
「で、でも……」

勘の良い子だったらすぐにバレちゃうんじゃ……

「じゃあ……これがいいかもね」
「え……」

そういって今宮くんは私を後ろの壁まで押し、自分は壁に手をついた。
これは……いわゆる、壁ドン……!

「カップルのフリをしようか」
「ええ!?」

逃げたいけれど、足音が大きくなって来ていて、恐らくもう間に合わない。
このままやり過ごす覚悟を決める。

「ちょっとだけ、ごめんね」

そう言うと、今宮くんの顔がさらに近づき、手が私のあごに触れた。

え、え……これって……キス!?

心臓の音がうるさくて聞こえてしまいそうで。

ギュッと目をつぶっているけれど、それ以上近づいてくる気配はなかった。
うっすら目を開けると、目の前に今宮くんの顔……
何が起きているのかよくわからないけれど、恐らく寸止めでキスしているフリをしていたのだと思う。

「わーイチャついてるよ」
「いいねーカップルは」

ガッツリ見られてる……
恥ずかしすぎるけれど、何とかバレずに生徒たちは通り過ぎて行った。

もう通り過ぎたのに、今宮くんは動かない。

「い、今宮くん……」
「はあー……」

ため息つくくらいなら、フリなんてしなければいいのに……
その事実がショックで、また心臓がぎゅっとして。
無意識に、目の前にある今宮くんの学ランをぎゅっと掴んでしまった。

「……自分が何してるかわかってる?」
「え?」
「その手」
「あっごめ……」

掴んでしまった手を慌てて離そうとすると、その手を強く握りしめられた。

「俺も……男だよ?」

そんなこと……わかってる。
今宮くんは男の子で……背も私より高くて、手もこんなに大きくて……

――大丈夫?こっちは終わったよ。パイプオルガンにパンプキンが入っていたから音が違ったみたい――

静かな廊下に、耳元からインカムから成沢くんの声が響いてくる。

「ごめん、戻ろうか」
「うん」

謝りながら、今宮くんは私から体を離す。
そのごめんはどういう意味なの……
聞くことはできずに、無言のまま新菜ちゃんたちと合流した。