光王子と月夜のシンデレラ

文化祭が終わって、すっかり静かになった教室を1人眺める。
私たちのクラスは、みんなの特技が生かされていたこと、あの停電にも慌てず対応できたことが評価されて、来場者と先生が選ぶ最優秀賞を受賞することができた。
本当にみんなに感謝しかない。

色々あったな……カフェのテーマに悩んで、AIと著作権に悩んで、味付けの再現に悩んで……
でも一番は今日のトラブルを救ってくれた、あの今宮くんのマジック。

思い出すだけで胸がぎゅっと掴まれた感じになって。
でも悲しいときのような苦しいぎゅっではなくて。
かっこよさとか、助けてくれた感謝とか……この気持ちはそれだけではないような気がする。

「鍵返してきたよ」
「あ、ありがとう」

鍵を返しに行ってくれていた今宮くんが帰ってきた。
みんなは打ち上げに行っていて、私たちも早く向かわなきゃなんだけど、ちゃんと伝えたい。

「今宮くん、今日は本当にありがとうございました」
「何回も聞いた」
「うん、何回も言いたくて」

「でもまあ、これでだいぶ近づいたね」
「何にです?」
「……特待生。最優秀賞まで取ったしね」
「あ!すっかり忘れてました……そっか、特待生のために委員になったんでしたっけ」
「ふっ……佐倉さんらしいね」

特待生のことを忘れるくらい、充実していた日々だったから。
今はもう、特待生のこと関係なく、やってよかったなという気持ちでいっぱいだ。

他のクラスももう帰っているみたいで、シーンとした校内の教室に、私たちの声だけが響く。

「これも毎回言っている気がするんですけど……支えてくれてありがとうございました」
「じゃあ俺も……毎回言ってる気がするけど、佐倉さんが頑張ったからだよ」
「そんな……」
「さっきの……髪飾り持ってる?」
「あっそうだこれ……」

私はポケットからマジックの時に手に入っていた髪ゴムを取り出す。

「あげる」
「えっ!いや、そんな……」
「俺が持っててもしょうがないでしょ」
「でも……」

改めて見ても、ピンクの石と周りの装飾が可愛くてセンスがいい。

「もともと、佐倉さんに似合うかなって思って買ったから」
「え……」
「前に特技が奇術って言ってくれた日から、マジックのこと調べて練習して……まあ、予想通りそんなに練習しなくてもすぐ出来たんだけど」
「やっぱり……!」
「いつかこのマジックを佐倉さんに披露して、渡そうって思ってた。ずっと苦しんできた俺を救ってくれたお礼」
「そんな……私別に大したこと……」
「ふっ披露するのが想定外に早かったけど……俺にとってはこんな髪飾りじゃ足りないくらいのことなんだよ。まあ、だからもらって」

今宮くんが珍しく照れている。
その顔を見て、やっぱり心臓がぎゅっとなる。

「あ、ありがとう」
「ん。つけていい?」
「えっ!いや、今髪ボサボサで……」
「いいから、おいで」