光王子と月夜のシンデレラ

「わ、私の特技は、絶対味覚です」
「……絶対味覚?」
「絶対音感の味覚版ですね。一度料理を食べれば、使われている食材、味付けなどがわかるんです」
「わかるっていうのは……」
「なんでしょう、うまく言えないんですけど……頭の中に浮かぶ感じです。それこそ、ドとかミってわかるように」
「どんな食材でも?」
「さすがに食べたことのないもの、味を知らないものは浮かばないです。なので小さいころから、極力色々なものを食べるようにして来ました」

初めて聞く特技である。そりゃ、さっきの喫茶ナポリの再現もできるってわけか。

「料理の才能は?」
「ないです。味付けという面では、調味料の配合がわかっているので失敗しないと思うのですが、焦がしたり、切るのが下手だったりは……お恥ずかしながらあります」
「じゃあ料理できるのは努力なんだ、すごいな」

いえいえ、なんて謙遜しているが、役にも立つしうらやましいくらいすごい特技だと思う。
俺はこの2日間、彼女の特技は料理系という話を忘れていて、てっきりあの戦闘能力の高さが特技なのかと思っていた。
そうではないのなら、あの強さは素の強さなのか……何者なんだよ。

「佐倉さん、せっかくだし……もう少し話をしてもいい?」
「あっはい、もちろんです」

屋形船のライトが点々と海を照らしている。肌寒いがもうそんな季節か。

俺は学校や他人の前の姿は取り繕っているだけで、本当はあまり人と深く関わりたくない。
そんな自分がこんなこと言うとは、再び自身に驚いている。

けれど彼女は今日の俺のこの態度や口調に関して何も言わないし、何なら自然と受け入れてくれているように感じる。
だからかな、今も何となく居心地が良い。

「佐倉さんはいつもクエストを受ける側なの?」
「はい。と言っても私は絵画とかの知識はなく、味覚だけで。けれど味覚系のクエストなんてほとんどないので、周辺警備系のクエストばかりですけど」

周辺警備……俺が今回受けたような調査のクエストと対になるように同時に発令されるクエストだ。
対象物が偽物の場合、周囲ですり替えた犯人が監視している場合もあるし、調査中は無防備でもある。
今日のように昨今の芸術界隈は、事件が起こりやすい。調査者を守る目的だ。
運動能力が高い人や戦闘向きの特技を持っている人が受けることが多いが、もちろん、正当防衛以上の行為は禁止。

「クエストを受けている目的は?」
「目的……ですか?」
「確かに佐倉さん強いけどさ、それが特技ではないでしょ。危険を冒してま……」
「学食代ですよ!」
「……は?」