光王子と月夜のシンデレラ

「あら~珍しい!なっちゃん完食じゃない♡」
「あ、ああ……ごちそうさまでした」

考え事をしながらいつの間にか完食していたらしい。
珍しいと言うが、別に食が細いわけではないし、出されたものは完食している。
食事自体をしないことが多いだけ。

「アタシお皿洗って来るわね」
「あ、しいちゃん、私が!」
「いいのいいの♡ありがとう。未桜ちんは座っててね」

食事の時間を削ってでも勉強をしてきた。
親に強制されたわけではない。勉強は嫌いではなかったし、目標のためにも必要なことだったから。
食事は体力を維持する最低限と、脳が働くための糖分で十分だと思っている。

ただ……佐倉さんの作る料理はおいしくて、おいしいだけじゃない何か……ホッとするような、また食べたいと思えるような。
言葉で表現するのは難しい、そんな温かさを感じた。

「ありがとう」
「い、いえ!そんな!食べてくれてありがとうございました」

なんであんたがお礼言うんだよ。しかも……

「ふっ、ケチャップついてる」
「えぇ!?すみません、お目汚しを……ひぃ!」
「違う、こっち」

慌ててゴシゴシ擦った肌が赤くなってしまっていて、見ていられず気づけば彼女の頬に触れていた。
必然的に距離も近づいているわけで、学校ではうつむきがちな彼女の顔を、初めてしっかりと見たかもしれない。
この目……やはり昨日助けてもらった時にチラリと見えた目だ。

「はーい、そこまで♡」

洗い物を終えた史郎が、俺たちの間に入るように戻ってきた。

「なっちゃん、未桜ちん困らせちゃダメよ」
「は……?」
「こ、困ってないですよ!?大丈夫です!」

よくわからないが、目の前の彼女に視線を戻すと、真っ赤になりうつむいていた。

「さぁて、もう遅いしね。ここからは大人の時間よ♡」
「普通に帰れって言えよ……」
「あっ、あのしいちゃん……色々とありがとうございました」
「ふふっ、未桜ちん素材がいいから変身させがいがあるわ♡また来てね」

帰り支度をして、ドアの方へ向かうと、後ろからまた余計な声が聞こえてきた。

「なっちゃん!ちゃんと送るのよ、もう遅いんだから」
「そのつもりだよ」
「あらぁ~なっちゃんもいい男になってきたわね♡」

もう何も返事をする気にはならず、オロオロしている佐倉さんを促してそのまま2人で史郎のアトリエを出た。