愛されたい妹と逃げる婚約者

「エドワード様は私への愛が足らないと思いません?」


 ……またしても始まった、我が妹フランドールは異常なまでに相手に要求する愛が大きいのだ。


 まさにキレイな何とかには棘があるを地でいき、可愛い顔とは裏腹に、男達を苦しめる悪魔だと、我が姉ならが思う。



 エドワード様とは妹の婚約者である子爵家の次男なのだが、男爵家に過ぎないうちらからしたら、十分な相手だと言うのに……



「お姉様聞いてます?」


 しまった!つい考えていたら返事が遅れた!フランドールはそういうところ、男ほどではないが女にも厳しいのだ……



「……聞いてますわ、で今回は何だって言うのかしら?」




「よくぞ聞いて下さいましたお姉様!エドワード様ったら私に花束を渡しただけだったのですわ!酷いと思いません?」




「花束を用意しただけいいじゃない……」



「いいえ、私への愛が足りませんわ、あんなにも私を生涯守るとかなんとかいって、この程度で信用しろってのがおこがましいですわ!」



 うーん、エドワード様も最初はフランドールにベタ惚れしてたから、つい調子に乗ってそういうことを言ったのでしょうね……



「婚約者になった以上エドワード様はもっと私に愛を示すべきなのです!」



 ……まぁ分からなくは無いけど、一応最低限の義理は果たしていると思うのよね……


 お茶会をすっぽかしたりはしていないみたいだし……


 だがフランドールは絶対にそういうのを許さない!



「お姉様?聞いています?これほど私への愛が足らないって私への侮辱ですわ!あれほど私のためにとか何とか言っておきながら、許せませんわ!」



 まぁ分からなくはないけど……するとフランドールがとんでもないことを言い出したのであった!


「次のお茶会お姉様もお付き合いして頂けますか?そこでエドワード様がいかに駄目な男かチェックして欲しいのです、お姉様が注意して改めればそれで良し、ダメならお父様に婚約破棄も視野だと進言して欲しいですわ!」



「ふぁ!?」


 思わず変な声が出たが、なんじゃそれ……


 何でそんなことを私がしないといけなのか、面倒な上に、エドワード様に私が角が立つではないか!



 私が躊躇している様子に気づいたフランドールは、



「可愛い妹の頼みよ、聞いてもらえるかしら?」


 などと女にすらこの厚かましさである、これじゃ男相手にはもっと酷いのでしょうね……



「あのねぇ……世の中貴族の世界は取引よ、ただでやってもらおうなんてのは、何も与えるものが無い奴隷の世界の最終手段じゃない、勘違いしないで!」


 私はこの分かっていないフランドールに容赦なく言ってやる!



「お姉様逆ですわ、貴族はあるからこそ、気前よく相手のために動けるのです、奴隷のほうがその辺り詳しくないけど意地汚くなるのでは?」




「……あんたは貴族を勘違いしているわ、貴族と言えど、無限の資産は無いの、そんな考えでは破産するわよ……」




「私はそんなケチなことをしたくないの!」



「分かった分かった、でも私はいくら妹だからって、そんな面倒なことをただで付き合う義理は無いの!」



「ケチ!」



「ケチなのはただでやってもらおうっていう貴女じゃない、流石に弁えて……」



「分かりましたよ分かりました!じゃあお姉様は何をしたらついてきてくれるのかしら?」




 やっと話が進むのか……


 フランドール、貴族はね余裕からのんびりを見せ掛ける人もいるけど、実際は超速が大事なの……

 だって本来は忙しいはずなのですからね……!



「フランドールは私に何ができるの?」



「何がって言われても……」



「じゃあ取引にならないじゃない!」



「難しいことを言わないでよお姉様!」



 ……まったくお父様もお母様も世間の男達もフランドールに甘すぎるからこんな問題児になるのよ……




「そうね……今すぐに私もこうして欲しいってのは浮かばないわ、だから言うことを1つ聞く券、これを私に発行して下さらない?」



「何それ~何か無理難題をお姉様言うんじゃないでしょうね?」




「……姉を疑うのであれば、この取引はこれまでよ、いくらなんでも貴女に死んでくれ見たいな無理は言わないわ……」



「分かったわよ!お姉様を信じますわ!」



「それでいいの……」




 こうしてフランドールのクソワガママに付き合うことになった私……




「やっぱこういうことはお姉様が頼りになるからね!」



 何を戯言を言っているのか、皮肉にも一番フランドールを甘やかさない私が、こういう時に助かるなどとこいつは思っているのだろうか?


 と半分呆れるのであった……



 そして次のお茶会、お邪魔になるから嫌だなぁと思うが、私もフランドールに同行してエドワード様に会うことになった……



「これはこれは、レミリアお姉様じゃないですか、本日はどうかしたのですか?」



 そりゃ少し困惑の表情が見えるエドワード様……当然よね……



「すみませんエドワード様、妹が今日は付いて欲しいと言うもので……」



 何て言ってると隣の席のフランドールが私の膝をつついてくる……



 ああ……もっといい言い訳を言えって事ね……知らんがな!




「そうそう、フランドール、今日は君のためにこんなにもキレイな花を用意したんだ、今日は嬉しいだろう?」





「……また花束ですか?私は花束を渡せばいいという安い女では無いの!本当に私のことを愛しているので?」



「あ……愛しているさ!僕がフランドールに一目惚れしてこうやって婚約まで持ち込んだことは、フランドールが一番良く知ってるでは無いか!」




 うわー……私何でこんなしょうもない会話を聞かないといけないんだろう……


 もちろん2人の世界ならばこういうのをするのも自由だと思う、でも第三者が聞くと、こんなにもげんなりするんだなって思ったのである……


 そういう貴重な体験をある意味させてくれた点は、フランドールに感謝しますわ。二度と未来永劫したくない経験ですけど……!



「お姉様聞きました?この白々しいエドワード様に、お姉様から何か言ってやってくださいな!」



 いやいやいや、私に何を言えと?


 流石に困惑したのだが、エドワード様も、私を少し恐れた顔をして見てくる……


 安心して、私はエドワード様に文句を言いに来たわけじゃないから……




「……エドワード様の何が不満なの?」



 私はとりあえず不満を聞き出すことにした……




「お姉様?見て分かるでしょう、エドワード様は私への愛が足らず、いやもはや愛してすらいないのですわ、心がこもっていない花束だけで何とかなると思っているの!こんな愛が無い人生、私は送りたくないですわ!」




「……誤解だよフランドール、僕がフランドールを愛しているのは散々伝えたじゃないか!」


 そう叫びながら、エドワード様が私に助けを求めるような顔を一瞬見せたのを、フランドールは見逃さなかった!



「今お姉様のほうを見たわよね!もしかして私ではなく、お姉様が好きとか言い出すの!?」



「……いや見ていない!」



「嘘を付くんだ……エドワード様私に嘘をつくなんて見損ないましたわ!もう今日は帰ります!」



 ……そう叫ぶなり、1人でどんどん向かうではないか、私が



「ちょっとフランドール!」と言っても聞く耳を持たない!





 私も慌ててフランドールを追いかけようとしたら、エドワード様が止めるでは無いか……




「レミリアお姉様、正直言うと僕はもうフランドールを愛していける自信が無い、だってどうしたらいいか分からないんだ!」と半泣きになりながら、私に言うでは無いか……



 はぁあああああああああああああ!マジでどうしたらいいの?これ……




「わ……私に言われても!」


 うん我ながら恥ずかしい返しをしてしまった、ちょっとこれは駄目よね……
 色んな意味で……




「……政略結婚の意味も兼ねているから、両家の婚約さえされていれば問題無いのだろう?もう僕はフランドールのお守りはできない、レミリアお姉様、どうか僕と婚約して欲しい……」



 こいつ何言ってるのかしら……


 私はフランドールの逃げ道の先じゃない!



 こんな戯言の甘ったれ男知らないわよ!




「……お断りしますわ、確かに私にはまだ婚約者がいないけど、それはフランドールに早期婚約をした貴方がいたから遅れているように一見見えるだけで、私も十分適齢期ですから……」



「どうして!」



 ……この男も勘違い甚だしいわね……ようは貴方は嫌だと言ってるのよ……


 どうしてわからないのかしら……



「妹の婚約者を奪うなんて汚名を被るほど、貴方と一緒になる道理が無いからですわ!」



 こう言えば引っ込むだろ、まったくこんな相手の道理も分からないからこそ、フランドール相手の距離感を間違えるのよ……




 家に帰るとフランドールが私に問い詰めてくる……



「お姉様!?エドワード様と何を話していたのです!」



 これ正直に言うべきかしら?奴がフランドールから逃げたくて、私に婚約してくれなどと寝言を言ったことを……



 言っても困る、嘘ついても困る……


 はぁ最悪じゃないか!



 何で関係無い私がこんな目に合わないといけないのか!



 イライラしかして来ないので、もう知ったことか!と全部正直にぶちまけることにした!


 何で私がこんなことを抱えてやらないといけないの!アホ2人のために!

 ってことでね……




「エドワード様はフランドールにはもう耐えられないってことで、私に婚約を求めてきたわ、もちろん断ったわよ、それがすべてよ!」



 私は遠慮なく言うと、フランドールはブチ切れた!



「お姉様それ本当ですの!」



「本当よ!」


 私も負けずに怒鳴りつけると……




「……許しませんわエドワード様、よくもよくも私を裏切ったわね、一生愛するとか言っておいて、絶対に許しませんわ!」


 というので、私は、


「怒るのは分かるわ、でも今言うことを聞く券を使わせてもらいますわ!」



「何!?」


 あーこわこわ、今にもエドワード様を刺しかねないからこれだけは言わないと……




「恨むのは自由!でもね、家に迷惑がかかるような報復の仕方だけは禁止!貴族として考えてね!これが言うことを聞く券よ!」



 ……流石のフランドールも一旦大人しくなった……


 危なかった、あいつエドワード様を最悪刺しかねない勢いだったからね……



 流石にそれはまずいのよ……まさか言うことを聞く券が私に何の得も無い形で消耗されるとは思わなかったけど……!



 その後だが、なんとあの馬鹿2人は元サヤに戻ったそうな……


 信じられないと思ったけど、どうやらエドワード様は私に振られたことで、フランドールしかいないと思って、改めて謝罪と愛をひたすら囁き続けた結果、何とかフランドールの許しを得てこうなったらしい……


 まぁフランドールもなんだかんだでエドワード様から離れる勇気まではなかなか無かったのでしょうね……



 呆れた、アホみたいな2人にはお似合いよねある意味……




 私は結婚願望がまったくないとは言わないが、あんな2人を見て、


 うん、別に最悪できなくてもいいから、またはいわゆる政略結婚でもいいから、落ち着いた関係がいいなとか、まだ私も若いはずなのに、お婆さんみたいなことを思う自分に、悲しい気持ちになったのであった……!