玄関のほうが、がやがやしてきた。
メンバーが帰ってきたのかな?
「ただいまー! あれ、眞緒ちゃん来ていたんだ」
「ハルトくん! おかえりなさい」
桃原ハルトくんが、学校から帰ってきたみたい。いつものように、かわいい笑顔を見せてくれる。
ひとりかと思ったら、ハルトくんの背後からもうふたつの影が見えた。
ハルトくんのうしろには、柴村くんがぴったりくっついて歩いてきていた。少し、怯えたような顔つき。そして、黄川田くんはそんな柴村くんの様子を見て苦笑いしている。
柴村くんは人見知りだから、仕方ない。嫌われているわけじゃ……ないよね?
「黄川田くん、柴村くんも、おかえりなさい」
「……でいいよ」
柴村くんの、ぼそっと小さな声。なんて言ったの?
私が首をかしげると、柴村くんはじっと上目遣いで私を見てもう一度口を開いた。
「シオン、でいいよ……」
「えっ?」
ハルトくんが、あはは、と笑った。
「僕がハルトって呼ばれているのがうらやましいんだねー」
「べつに……」
照れて、ハルトくんの服をもじもじといじくる柴村くん。か、かわいい……!
「じゃあ、シオンくんって呼ぶね」
「えーずる! だったらオレも、黒島くんじゃなくてタイガって呼んで!」
「じゃあ僕も、黄川田くんじゃなくてミナトって呼んでくれたらうれしいかも」
黒島くん、黄川田くんも参加してくる。
下の名前で呼んでいいなんて! なんだか、トクベツ感があるよね。
ちらりと、赤染くんの様子を見る。赤染くんは……なにも言わなかった。
てっきり、この流れに乗ってくれるかと思ったのに。
下の名前で呼ばれたくないのかな……私にそこまで、心を開いてくれていないのかも。
ちょっとだけ落ち込むけど、それが当然。むしろ、ほかのメンバーみたいに親しく話してくれる人のほうがめずらしいんだよ。
物語の中でもメンバー以外からは「赤染くん」って呼ばれているし、下の名前のイオリくんって呼ぶなんて特別すぎるもんね。
私みたいな脇役が出しゃばったらだめだよね。
「眞緒ちゃん、昨日は急にいなくなってびっくりしたよー」
「そうそう、体調だいじょうぶ?」
ハルトくんとタイガくんが心配してくれる。
そういえば、休むために赤染くんの部屋に行って、そのまま自分の物語の中に帰ってきちゃったんだ。
「え、ああ、うん。みんなちょうどリビングにいなくて……ね」
「そうそう」
私と赤染くんは、あわてて言い訳をした。
「そんな時間あった?」
冷静なミナトくんが、宙を見上げて昨日のことを思い出そうとしている。
思い出さないでー!
「そんな時間、あったあった!」
ねー、と赤染くんと顔を見合わせる。
なんだか、ひみつを共有しているみたいで……ちょっと、うれしかった。ピンチなんだけどね。
メンバーはそこまで追及することなく、すぐに話題が変わった。みんな、深いことはあまり考えないでいてくれて助かる。
「ご両親が仕事でいないなら、泊ってもいいのにー」
ハルトくんが、いい案! と言わんばかりに提案してくれる。
「あ、いや、さすがに学校もあるので……ははは」
学校がなかったとして、カラリスのシェアハウスに泊るのはちょっとむり。一睡もできない! どきどきしすぎて死んじゃう!
「ところでさ!」
赤染くんが、ぱんと手を叩いた。場の空気が変わったのを感じる。
「せっかく眞緒ちゃんが来てくれたんだし、みんなで歓迎会のパーティーしようよ!」
「いいねー!」
ハルトくんがすぐに同調する。
「パ、パーティー? 私のために?」
カラリスが? 歓迎?
「うん、せっかくならみんなと仲良くなろうよ!」
赤染くんが、にっこにこの笑顔を向けてくれる。
そういえば、こっちの物語の中に来る前に「カラリスのメンバーと仲良くしたいよね」と聞いてくれたっけ。それを実行しようとしてくれているんだね。
「いいね! じゃあオレ、ピザのデリバリー頼もうかな。ほかに欲しいものある?」
タイガくんの言葉に、ミナトくんが手をあげる。
「ハンバーガーにポテトに、それからチキンもほしい。俺はジュースとお菓子を買ってくる」
それだけ言うと、すっと立ち上がって家を出て行った。
「ミナトは、隠しているけど大食いなんだ……。引かないであげてね……僕も行くよ」
シオンくんが、怯えたように言って、ミナトくんについて行った。
物語の中では、ミナトくんが大食いであることは描かれているから知っているんだけど、ファンの人の前では隠しているんだよね。
だから私も、知らないふりをしてシオンくんの背中に「そうなんだ~」と答えた。ウソをついているみたいで、ちょっと気が引けるけどね。
「パーティー、楽しんでいってね。俺がフォローするから安心して」
赤染くんが、こそっと言ってくれる。
「うん、ありがとう!」
赤染くんが、至近距離で笑顔を見せる。直視できないんですけどー! まぶしすぎて、目がチカチカする!
「なになにー? ふたりでこそこそ話してー」
ハルトくんがニヤニヤと私たちをからかう。
「なんでもないって。じゃあ俺もお皿とか準備しよっと」
「じゃあ私も……」
立ち上がろうとすると、赤染くんが首を左右に振る。
「お客さんなんだから働かなくていいよ。ハルトとおしゃべりしてて」
「う、うん……」
なんか、拒否された? いっしょにお手伝いしたかったんだけどな……。
「僕はお客様おもてなし係ー!」
私のもやもやをよそに、ハルトくんがにこにこと言う。私に考えるヒマすら与えられないこのフォーメーション!
「う、うん。ありがとう」
買い物に行ったミナトくんとシオンくん。スマホを見てあちこちにデリバリーを注文するタイガくん。お皿の準備をしはじめる赤染くん。おもてなし係のハルトくん。
すごい、それぞれの役割がちゃんとしていて、誰がなにをするって話さなくても分担できるんだね。
カラリスは結成して二年、デビューして一年だけど、すごくチームワークがいいんだなってあらためて実感する。
けど……赤染くんに下の名前呼びを拒否されたことが気になる。
なんとなく、赤染くんにさけられているような気がする?
下の名前で呼ぶ流れで、「俺も、イオリって呼んで」と言わなかったし……。
もしかして私、メイワクなのかな?
そこで、はっとなる。
物語を読んでいる私に、自分の心の内も知られているって思ったから?
逆に、私の心の内を知っているから、話しにくいとか?
『ひまわりダイアリー』では、私ってどれくらい物語に登場するんだろう。赤染くんと違って脇役だから、そんなに詳しく語られてはいないだろうけど……。
いやだな、私は赤染くんといちばん仲良くしたいのに。
大好きなカラリスのメンバーとパーティーできるっていうのに、私の気持ちはちょっと、しぼんでいってしまった……。
メンバーが帰ってきたのかな?
「ただいまー! あれ、眞緒ちゃん来ていたんだ」
「ハルトくん! おかえりなさい」
桃原ハルトくんが、学校から帰ってきたみたい。いつものように、かわいい笑顔を見せてくれる。
ひとりかと思ったら、ハルトくんの背後からもうふたつの影が見えた。
ハルトくんのうしろには、柴村くんがぴったりくっついて歩いてきていた。少し、怯えたような顔つき。そして、黄川田くんはそんな柴村くんの様子を見て苦笑いしている。
柴村くんは人見知りだから、仕方ない。嫌われているわけじゃ……ないよね?
「黄川田くん、柴村くんも、おかえりなさい」
「……でいいよ」
柴村くんの、ぼそっと小さな声。なんて言ったの?
私が首をかしげると、柴村くんはじっと上目遣いで私を見てもう一度口を開いた。
「シオン、でいいよ……」
「えっ?」
ハルトくんが、あはは、と笑った。
「僕がハルトって呼ばれているのがうらやましいんだねー」
「べつに……」
照れて、ハルトくんの服をもじもじといじくる柴村くん。か、かわいい……!
「じゃあ、シオンくんって呼ぶね」
「えーずる! だったらオレも、黒島くんじゃなくてタイガって呼んで!」
「じゃあ僕も、黄川田くんじゃなくてミナトって呼んでくれたらうれしいかも」
黒島くん、黄川田くんも参加してくる。
下の名前で呼んでいいなんて! なんだか、トクベツ感があるよね。
ちらりと、赤染くんの様子を見る。赤染くんは……なにも言わなかった。
てっきり、この流れに乗ってくれるかと思ったのに。
下の名前で呼ばれたくないのかな……私にそこまで、心を開いてくれていないのかも。
ちょっとだけ落ち込むけど、それが当然。むしろ、ほかのメンバーみたいに親しく話してくれる人のほうがめずらしいんだよ。
物語の中でもメンバー以外からは「赤染くん」って呼ばれているし、下の名前のイオリくんって呼ぶなんて特別すぎるもんね。
私みたいな脇役が出しゃばったらだめだよね。
「眞緒ちゃん、昨日は急にいなくなってびっくりしたよー」
「そうそう、体調だいじょうぶ?」
ハルトくんとタイガくんが心配してくれる。
そういえば、休むために赤染くんの部屋に行って、そのまま自分の物語の中に帰ってきちゃったんだ。
「え、ああ、うん。みんなちょうどリビングにいなくて……ね」
「そうそう」
私と赤染くんは、あわてて言い訳をした。
「そんな時間あった?」
冷静なミナトくんが、宙を見上げて昨日のことを思い出そうとしている。
思い出さないでー!
「そんな時間、あったあった!」
ねー、と赤染くんと顔を見合わせる。
なんだか、ひみつを共有しているみたいで……ちょっと、うれしかった。ピンチなんだけどね。
メンバーはそこまで追及することなく、すぐに話題が変わった。みんな、深いことはあまり考えないでいてくれて助かる。
「ご両親が仕事でいないなら、泊ってもいいのにー」
ハルトくんが、いい案! と言わんばかりに提案してくれる。
「あ、いや、さすがに学校もあるので……ははは」
学校がなかったとして、カラリスのシェアハウスに泊るのはちょっとむり。一睡もできない! どきどきしすぎて死んじゃう!
「ところでさ!」
赤染くんが、ぱんと手を叩いた。場の空気が変わったのを感じる。
「せっかく眞緒ちゃんが来てくれたんだし、みんなで歓迎会のパーティーしようよ!」
「いいねー!」
ハルトくんがすぐに同調する。
「パ、パーティー? 私のために?」
カラリスが? 歓迎?
「うん、せっかくならみんなと仲良くなろうよ!」
赤染くんが、にっこにこの笑顔を向けてくれる。
そういえば、こっちの物語の中に来る前に「カラリスのメンバーと仲良くしたいよね」と聞いてくれたっけ。それを実行しようとしてくれているんだね。
「いいね! じゃあオレ、ピザのデリバリー頼もうかな。ほかに欲しいものある?」
タイガくんの言葉に、ミナトくんが手をあげる。
「ハンバーガーにポテトに、それからチキンもほしい。俺はジュースとお菓子を買ってくる」
それだけ言うと、すっと立ち上がって家を出て行った。
「ミナトは、隠しているけど大食いなんだ……。引かないであげてね……僕も行くよ」
シオンくんが、怯えたように言って、ミナトくんについて行った。
物語の中では、ミナトくんが大食いであることは描かれているから知っているんだけど、ファンの人の前では隠しているんだよね。
だから私も、知らないふりをしてシオンくんの背中に「そうなんだ~」と答えた。ウソをついているみたいで、ちょっと気が引けるけどね。
「パーティー、楽しんでいってね。俺がフォローするから安心して」
赤染くんが、こそっと言ってくれる。
「うん、ありがとう!」
赤染くんが、至近距離で笑顔を見せる。直視できないんですけどー! まぶしすぎて、目がチカチカする!
「なになにー? ふたりでこそこそ話してー」
ハルトくんがニヤニヤと私たちをからかう。
「なんでもないって。じゃあ俺もお皿とか準備しよっと」
「じゃあ私も……」
立ち上がろうとすると、赤染くんが首を左右に振る。
「お客さんなんだから働かなくていいよ。ハルトとおしゃべりしてて」
「う、うん……」
なんか、拒否された? いっしょにお手伝いしたかったんだけどな……。
「僕はお客様おもてなし係ー!」
私のもやもやをよそに、ハルトくんがにこにこと言う。私に考えるヒマすら与えられないこのフォーメーション!
「う、うん。ありがとう」
買い物に行ったミナトくんとシオンくん。スマホを見てあちこちにデリバリーを注文するタイガくん。お皿の準備をしはじめる赤染くん。おもてなし係のハルトくん。
すごい、それぞれの役割がちゃんとしていて、誰がなにをするって話さなくても分担できるんだね。
カラリスは結成して二年、デビューして一年だけど、すごくチームワークがいいんだなってあらためて実感する。
けど……赤染くんに下の名前呼びを拒否されたことが気になる。
なんとなく、赤染くんにさけられているような気がする?
下の名前で呼ぶ流れで、「俺も、イオリって呼んで」と言わなかったし……。
もしかして私、メイワクなのかな?
そこで、はっとなる。
物語を読んでいる私に、自分の心の内も知られているって思ったから?
逆に、私の心の内を知っているから、話しにくいとか?
『ひまわりダイアリー』では、私ってどれくらい物語に登場するんだろう。赤染くんと違って脇役だから、そんなに詳しく語られてはいないだろうけど……。
いやだな、私は赤染くんといちばん仲良くしたいのに。
大好きなカラリスのメンバーとパーティーできるっていうのに、私の気持ちはちょっと、しぼんでいってしまった……。


