「眞緒、また本を読んでいるの?」
休み時間、親友の陽向リカコに話しかけられた。リカコの髪は、校則を思いっきり無視した明るい茶色に染められている。肩を流れるストレートヘアは、サラサラと音が流れそうなくらい。
私は、読んでいた本をぱたんと閉じる。染めたことのない黒髪は肩につかない長さで、くせっ毛もあって巻きがとれたみたいな、中途半端な髪型。リカコは「かわいい!」って言ってくれるけどね。
「うん! 赤染くんたちの新しいお話が出たんだよ!」
私は、お母さんお手製の赤い布製のブックカバーをはずして表紙をリカに見せた。
イラストの表紙では、主人公の赤染くんをセンターに、五人の男の子たちが描かれていた。
タイトルは『カラリス☆ステージ!』
この物語は、中学一年生から三年生の五人組アイドルグループ「カラリス」の活躍を描いたもので、すでに十四巻まで発売されているんだよ。
私の推しは、主人公の赤染イオリくん! 私と同じ中学一年生なんだ。
クールな見た目だけど熱い心を持っていて、歌もダンスも上手なカラリスのセンター。
他のメンバーは、リーダーの黒島タイガくん。
人見知りで子犬っぽい柴村シオンくん。
かわいいキャラの桃原ハルトくん。
最年少のクールキャラの黄川田ミナトくん。
みんなそれぞれにかっこよくて、個性豊か。
五人は一軒家で共同生活をしている。
中学生だけのシェアハウス、いいよね!
私は、両手でほおづえをつきながら、すてきな世界を妄想する。
「赤染くんがクラスにいたら。赤染くんがアイドルをしている世界にいたら。カラリスのコンサートを見ることができたら……って思うだけで、元気になる。わくわくする!」
私のイキイキした顔を見て、リカコは苦笑いをする。
「もー、せっかく学校に来たんだから、読書じゃなくてあたしと話そうよー」
「ごめんごめん」
私は本にカバーをかけなおして、カバンにしまった。
リカコは、中学生モデルとして活躍している。学業優先とはいえ、撮影があるから毎日学校に来られるわけではないの。
今日はせっかくのリカコの登校日なのに、我慢できなくて本を持ってきて読んでしまったんだよね。昨日読んだのに。
「よっぽど、本が好きなんだね」
リカコが、空いているとなりの席を私のもとに持ってきて、座る。
校則を無視しまくった短いスカートから、細くてまっすぐで長い足が見える。私はつい、自分のスカートを整えるフリをして足を隠した。
「大好きだよ。本はいつでも私をむかえ入れてくれるから」
現実ではさえない日常。リカコみたいにキラキラした活動をしているわけでもないし、クラスの子みたいに部活や習い事に励んでいるわけでもない。
そんな私の居場所が、本の中なんだよ。
「あたしは、三次元にもっと目を向けてもいいと思うけどね」
リカコは、クラスの男の子たちに目を向ける。
教室でわいわい騒ぐ子、静かにおしゃべりしている子、いろいろいるけど……。
「だいじょうぶだよ、みんな私に興味ないって」
私も、興味ない。
現実の男の子って、すぐ大きな声を出すし、からかってくるし、男子が集まると調子に乗るし……あんまり好きじゃない。
鼻の下に生えはじめた黒いつぶつぶも、なんかイヤ。
好かれなくていいんだもん。
「私はだれからも注目されない子でいいの」
「あんま、そういうこと言わないで。眞緒だって、眞緒の人生の主人公なんだよ」
むっとした表情でリカコが言う。またネガティブがでちゃった。
「ごめん。でも二次元っていいんだよ。相手に幻滅することはないし」
「あーまあね。蛙化現象なんて起きないしね」
「二次元は、ずっと理想の人でいてくれるから」
私は、本をしまったカバンに目をやる。
物語の中であれば、いつでもかっこいい、理想の男の子でいてくれる。幻滅することもされることもない。
リカコはまだなにか言いたそうではあったけど、それ以上は口を出さなかった。
すぐに、昨日の撮影現場にいたクセのつよいスタッフの話をおもしろおかしくしてくれる。
リカコは、モデルだから当然見た目がいい。話もおもしろい。正義感も強くて、私がネガティブなことを言っても、「眞緒だって主人公なんだよ」って言ってくれる。
でも、私は主人公なんかじゃない。脇役がぴったりだし、それが自分に合っているとも思っている。
私には、その役割で十分だよ。
休み時間、親友の陽向リカコに話しかけられた。リカコの髪は、校則を思いっきり無視した明るい茶色に染められている。肩を流れるストレートヘアは、サラサラと音が流れそうなくらい。
私は、読んでいた本をぱたんと閉じる。染めたことのない黒髪は肩につかない長さで、くせっ毛もあって巻きがとれたみたいな、中途半端な髪型。リカコは「かわいい!」って言ってくれるけどね。
「うん! 赤染くんたちの新しいお話が出たんだよ!」
私は、お母さんお手製の赤い布製のブックカバーをはずして表紙をリカに見せた。
イラストの表紙では、主人公の赤染くんをセンターに、五人の男の子たちが描かれていた。
タイトルは『カラリス☆ステージ!』
この物語は、中学一年生から三年生の五人組アイドルグループ「カラリス」の活躍を描いたもので、すでに十四巻まで発売されているんだよ。
私の推しは、主人公の赤染イオリくん! 私と同じ中学一年生なんだ。
クールな見た目だけど熱い心を持っていて、歌もダンスも上手なカラリスのセンター。
他のメンバーは、リーダーの黒島タイガくん。
人見知りで子犬っぽい柴村シオンくん。
かわいいキャラの桃原ハルトくん。
最年少のクールキャラの黄川田ミナトくん。
みんなそれぞれにかっこよくて、個性豊か。
五人は一軒家で共同生活をしている。
中学生だけのシェアハウス、いいよね!
私は、両手でほおづえをつきながら、すてきな世界を妄想する。
「赤染くんがクラスにいたら。赤染くんがアイドルをしている世界にいたら。カラリスのコンサートを見ることができたら……って思うだけで、元気になる。わくわくする!」
私のイキイキした顔を見て、リカコは苦笑いをする。
「もー、せっかく学校に来たんだから、読書じゃなくてあたしと話そうよー」
「ごめんごめん」
私は本にカバーをかけなおして、カバンにしまった。
リカコは、中学生モデルとして活躍している。学業優先とはいえ、撮影があるから毎日学校に来られるわけではないの。
今日はせっかくのリカコの登校日なのに、我慢できなくて本を持ってきて読んでしまったんだよね。昨日読んだのに。
「よっぽど、本が好きなんだね」
リカコが、空いているとなりの席を私のもとに持ってきて、座る。
校則を無視しまくった短いスカートから、細くてまっすぐで長い足が見える。私はつい、自分のスカートを整えるフリをして足を隠した。
「大好きだよ。本はいつでも私をむかえ入れてくれるから」
現実ではさえない日常。リカコみたいにキラキラした活動をしているわけでもないし、クラスの子みたいに部活や習い事に励んでいるわけでもない。
そんな私の居場所が、本の中なんだよ。
「あたしは、三次元にもっと目を向けてもいいと思うけどね」
リカコは、クラスの男の子たちに目を向ける。
教室でわいわい騒ぐ子、静かにおしゃべりしている子、いろいろいるけど……。
「だいじょうぶだよ、みんな私に興味ないって」
私も、興味ない。
現実の男の子って、すぐ大きな声を出すし、からかってくるし、男子が集まると調子に乗るし……あんまり好きじゃない。
鼻の下に生えはじめた黒いつぶつぶも、なんかイヤ。
好かれなくていいんだもん。
「私はだれからも注目されない子でいいの」
「あんま、そういうこと言わないで。眞緒だって、眞緒の人生の主人公なんだよ」
むっとした表情でリカコが言う。またネガティブがでちゃった。
「ごめん。でも二次元っていいんだよ。相手に幻滅することはないし」
「あーまあね。蛙化現象なんて起きないしね」
「二次元は、ずっと理想の人でいてくれるから」
私は、本をしまったカバンに目をやる。
物語の中であれば、いつでもかっこいい、理想の男の子でいてくれる。幻滅することもされることもない。
リカコはまだなにか言いたそうではあったけど、それ以上は口を出さなかった。
すぐに、昨日の撮影現場にいたクセのつよいスタッフの話をおもしろおかしくしてくれる。
リカコは、モデルだから当然見た目がいい。話もおもしろい。正義感も強くて、私がネガティブなことを言っても、「眞緒だって主人公なんだよ」って言ってくれる。
でも、私は主人公なんかじゃない。脇役がぴったりだし、それが自分に合っているとも思っている。
私には、その役割で十分だよ。


