『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

『急に誘って悪かったね……あ、ちょっといい?』

 一歩近づいてきた理仁は紗月の背中に腕を回した。

『あの……』

 一瞬抱き込まれるような体勢になり、紗月は驚いて理仁を見上げる。

『背中にゴミが付いてた。取れたよ』

 理仁は紗月のコートの上から背中を払い、耳元で笑うとスッと離れた。

『すみません……じゃあ』

 一刻も早くこの場から立ち去りたかった紗月はもう一度頭を下げて、逃げるように駅へ向かった。

(島君が、私のこと意識してくれてるなんて、ただの自意識過剰だった。むしろ迷惑だと思われていたなんて……)

 嫌なら面と向かって言ってくれればよかった。でも、それができないほど紗月は自分勝手な人間だと思われていたのだろうか。

 彼への失望と自分の愚かさと恥ずかしさで感情がぐちゃぐちゃになった。

 《私、迷惑だった?》と彼へメッセージを打ちかけたが、もっと嫌われそうで送信できなかった。

 そして年が明けた始業式の日。紗月は重い足取りで登校したが、航生に対してどんな顔をしていいかわからなかった。

 しかし、彼は欠席し、代わりに紗月の耳に入ってきたのは、彼にまつわる話だった。