『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

 紗月は頭を軽く振って思考停止させる。素早く衣服を身に着け、同じくソファーの上に置いてあったバッグからスマートフォンを取り出し時刻を確認する。

(まだ八時か。でも、こんなにちゃんと寝れたの久しぶりかも)

 最近は寝つきが悪いうえに必ず何度か目覚めてしまうのだが、昨夜は深く眠れた。おかげで昨日飲酒したにも関わらず頭はすっきりしている。

 紗月はそのまま受信の通知がついていたメッセージアプリを立ち上げる。そこには麻由から昨夜のやりとりの続きが入っていた。昨日はあの後色々あってメッセージをチェックする余裕が無かった。

《島君がOGセラミックの御曹司って噂あったじゃない? あれ本当だったみたい。今は大須賀っていう苗字なんだって》
 何気なく文字を追った紗月の息が止まる。

(大須賀……?)

 心臓がザワリと嫌な音を立てた。思考がある方向に向かった紗月は数秒固まってから、〝OGセラミック〟を検索にかけ、公式ホームページを確認する。企業情報のページには代表取締役社長として〝大須賀勝一(しょういち)〟という名前が掲載されていた。

 麻由からのメッセージはこうも書かれていた。