『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

 これまでは真面目に、堅実がモットーで生きてきたというのに自分でも驚愕だ。酔っていたとはいえ、こんなに大胆な行動をとるなんて。

 一方大須賀は規則的な寝息を立てている。

(それにしても、真のイケメンは、寝顔でさえ美しいのね)

 現実逃避気味に大須賀の顔を眺めていると、彼の左の口角の上にある小さなほくろに目が留まる。昨日彼に抱かれながら無意識に撫でたのを思い出して、じわじわと頬が熱くなる。

(島君も同じ場所にあったのを思い出して、つい……)

 表情の見えない彼だったけど、たまに笑ったとき口角と一緒に上がるほくろをさりげなく目で追うのがあのころの癖だった。

 さきほどまで夢で見ていた初恋の人の特徴を思い出し、胸がギュッと切なくなる。しかし感傷に浸っている場合ではない。

(どうしよう。大須賀さんが起きてくるまで待ったほうがいいよね……)

 しかし、起きてきたとて、どう対応していいかもわからない。さらに言えば非常にいたたまれない。

 お互い酔っていたから盛り上がってあんなことになったが、素面になってみると気まずいことこの上なかった。きっと大須賀も同じだろう。