『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

『そうか、クラスメイト……初めまして、僕は航生の兄で理仁(りひと)です。航生にも仲のいい友達がいてよかったよ。いつも弟がお世話になっています。』

『い、いえ、こちらこそ。永井紗月です』

 上品な所作で話しかけられ、慌てて頭を下げていると隣から声が聞こえてきた。

『兄さん、母さんはさっきまで俺たちと話していたので、疲れているかもしれません』

『そうか、だったら顔だけ見たらすぐ帰るよ――ああ、航生、僕がここに来たことは……』

『はい、誰にも言いません』

(え、お兄さんなのに、お母さんのお見舞いにきたのを知られたくないの?)

 小声のやりとりが紗月にも聞こえてきて、違和感を覚えていると、理仁は『じゃあ、また』と言って歩き去った。

『永井、ちょっと付き合ってもらってもいいか』

 理仁の姿が見えなくなると、航生はそう言って紗月を外に連れ出した。

『はい、これ』

『ありがとう』

 航生と共にやってきたのは病院からほど近い公園。

 公園の木々の葉は紅葉の時期を過ぎ、だいぶ散ってしまっていた。

 自販機で買ってくれたココアを受け取り、紗月は彼と並んで人気のないベンチに座る。