『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

『航生がこんなに打ち解けて話せる友達ができるなんて……ありがとう永井さん。これからもこの子と仲良くしてね』

『はい、もちろんです!』

 紗月は笑顔で返事をした。

 そのあともしばらく話をしていたが、航生の母に疲れが見えたので休んでもらい、航生とふたり病室を出る。

『……ごめん、驚かせたよな』

 エントランスに向かう廊下で、航生がためらいがちに声を掛けてきた。〝うん〟とも〝なにが?〟とも言えずに口ごもっていると、向かい側から男性が近づいてきた。

『航生、来てたのか』

 声を掛けてきたのは大学生くらいの若い男性だ。

『兄さん、来てくれたんですか』

(え、お兄さん?)

 航生に兄がいるのを初めて知った紗月は思わず前に立つ人物の顔を見た。似ているかどうかは、航生の顔が髪の毛と眼鏡で防御されているせいでよくわからないが、背はすらりとしていて上品な顔つきの柔和な雰囲気の人だ。

『たまにはと思ってね。それより航生、彼女できたの?』

 航生の兄は紗月に視線を移して口の端を上げる。

『かっ……?』

『違います。クラスメイトです』

 動揺する紗月をよそに、航生はすぐに否定した。