『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

『永井、あんまり余計な話はしないで』

 ゆったりした口調で話す母に航生は苦笑しながら、紗月にパイプ椅子を出してくれた。

『ふふ、島君は文化祭でも大活躍だったんです。うちのクラスはタピオカドリンクを売ったんですけど……』

 きっと航生の母は息子の学校での様子が聞きたいのだと察した紗月は、彼に構わず話し出す。

 九月にあった文化祭の模擬店で販売数の目安を予測し、グラスやジュース、タピオカのなどの必要な材料の仕入れ量を決めたのが航生だった。それが恐ろしいほどにはまり、紗月たちのクラスは学校全体で一位の売り上げをたたき出した。企画メンバーとして仕事を全うした彼は、クラスの中で株を上げていた。

『島君には商売の才能があるみたいなんですよ。将来会社を作ったら大成功しそう。私、雇ってもらおうかな』

『あれは、永井が無理やり企画メンバーに引きこまれて、仕方なく協力しただけだし、結果はたまたまだ』

 母親の前で褒めちぎられて、航生はバツが悪そうだ。

 そんな子どもたちのやりとりを見守っていた航生の母は、嬉しそうに目を細めた。