『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

(島君、本当はこうやって友達の心に寄り添える人なんだ……)

『ありがとう。そういうふうに言ってもらえて、嬉しい』

 頬が熱くなっているのがわかりませんようにと願いながら、紗月は俯いてお礼を言う。

『夏休みが終わっても勉強は教える。お礼は別にいらない。その代わり今度病院で母さんに会ってくれないか……じつはずっと永井と話したいって言ってて』

 航生の母と初めて会ってからもう二か月近く経つ。いままであえて聞いてこなかったが、未だに入院中だという事実を知り胸が痛む。

『うん、もちろんだよ』

 紗月はすぐにうなずいた。


 夏休みが終わり三年生はさらに受験モードに突入する。

 紗月は相変わらず航生に勉強を教わっていた。それを見て、麻由やクラスメイトは『あの陰キャの島君とがどうやったら仲良くなるわけ?』と驚いていたが、『教室で勉強している内にね』とだけ説明し、彼の母については一切触れなかった。

 その優秀さが知られるようになってから、航生は以前よりクラスメイトに注目される存在になった。彼は最初は戸惑っていたが、話しかけられれば普通に受け答えをしていた。