『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

 明らかに困惑した様子の航生に拝むように両手を合わせる。

『予備校に行けばいいじゃないか』

『うち三姉妹であんまり余裕がなくて、できればお金をかけずに国公立に合格したいの。このとおり、お願いします!』

 勢いで家庭事情まで零てしまったが、背に腹は代えられない。紗月は手を合わせたまま頭を下げてさらに頼み込む。

『……わかった。数列だけなら』

 しばらく黙った後、彼はため息交じりにうなずいた。

 翌日から航生は見舞いのあとに教室に現れ、紗月の隣で自らも机に向かうようになった。

 乃愛が無事退院したあと紗月は朝から学校で勉強し、午後になるとやってくる航生に質問するというのがいつもの流れになった。

 疑問を漠然と投げかけても、意図をくみ取った的確な答えが返ってくる。彼の教え方は要点を押さえていて、とても分かりやすかった。

『永井の志望校なら、こっちの参考書の方がいい』

『わかった。探してみる。ありがとう』

 この日も英語の文法の解説のあと、参考書まで紹介してもらった紗月は軽く肩を竦めた。

『もう、夏休みも終わるね。島君、今さらだけど勉強のじゃまになってごめんね』