草木はねむらない

 やつらは、ひそかに反乱(はんらん)をおこしていた。

 こつぜんと、行方不明(ゆくえふめい)になる事件が次々に起きた。それも日本全国。いや、世界中でも同じようなことが起きていたのかもしれない。ただ、アタシたちが気づかなかっただけだ。
 行方不明者の持ち物が落ちていたことがあった。血のあとも発見された。悲鳴(ひめい)を聞いたという人もいた。
 警察(けいさつ)捜査(そうさ)したけれども、犯人(はんにん)は分からずじまいだった。町の防犯(ぼうはん)カメラには、つれさられるような記録(きろく)は、のこっていない。そもそも、同じ時間に日本のはなれた場所で起きているのだ。
 これは偶然(ぐうぜん)なのか。
 けっきょく、だれにも気づかれないまま、ことが始まり、終わるのだろう。犯人が何者(なにもの)か分かるのは、被害者(ひがいしゃ)だけ。さいごに見たけしきが目に()きつくとき。

 そしてアタシもまた、そのひとりとなった。
 (じゅく)が終わり、すっかり日が暮れてしまったので、急いで家に帰るとちゅうだった。近道(ちかみち)をするために、小さな公園の中をとおりぬけていた。ほかに、人はいない。
 とつぜん、()えこみの(えだ)がアタシの前をふさいだ。草木(くさき)がからみつき、体中(からだじゅう)をぐるぐる巻きにされた。アタシは必死(ひっし)にもがいたが、どうすることもできなかった。
 痛い。体がちぎれそうだ。
 公園のすべての草木がまるでバケモノのように、ざわめいている。ちがう。本物のバケモノだ。
 アタシは気をうしなう直前、体がいきおいよく空中に持っていかれていくのを感じた。

 そう、やつらは眠らないことにしたのだ。