敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

「じゃあ、わかってるだろう」

「いつからなんですか?どこから?」

「先日の社長に呼び出された話。それだったんだ」

 あの夜のこと?

 あの後のチーフの様子がいつもと違うと思ったのはそういうことだったのか。

 てっきりプライベートのことかと思って追及しなかった。

 聞いていればよかったと雪は後悔した。

「何の記事のことです?」

「晴海商事」

「まさか、あの表の件ですか?あれってやっぱり……」

 高原がシイッと口の前に人差し指を出した。雪はあっと口を抑えた。

「水増しがあったんだ。誰にも言うなよ」

「ええ?!」

 チーフは頷いた。予算に水増し請求があったんだろう。

 氷室商事と晴海商事が主導するお台場のプロジェクトは政府の予算もつぎ込まれている。

 決算報告書を見ながら、来期の予算を両社で比べたチーフは、晴海商事の水増し請求に気づいたと言う。

 そのことを暗に担当者へ確認した。すると、うやむやにされたらしい。

 その後、そのことは決して記事にしないよう担当者から連絡があったらしい。