敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

「さっき、晴海証券の取材に行ったんですけど……ちょっと同じビルの晴海商事の人から呼び止められたんです」

 椅子を寄せて話してきた。雪は手を休めて彼を見た。

「何?どういうこと?」

「氷室商事から予算について晴海商事へ問い合わせがあったそうなんです」

「それで?」

「狼が氷室の担当になったのかと言うんですよ」

 氷室副社長にチーフがお祝いとして送った比較表のことだとすぐにわかった。

 副社長が晴海商事に何か確認させているんだろうとピンときた。

 間違いなく例の件だ。

「それでなんて答えたの?」

「僕は多分、チーフがチーム内の仕事は完全に掌握されていると話したんですけどね」

「そう……」

「佐山さんが担当になったことは話してません。まだ記事も出てないですよね」

「あ、うん。来月差し止めになった」

「やっぱり。なんか、やばいんじゃないですか?あの感じはそう思ったんですけど……」

 雪は海江田のそういう勘のいいところが本当に記者向きだと思った。

 雪は最初、そういう勘が働かず、記者に不向きだと高原に言われたからだ。

「海江田君は本当に記者に向いてる」