敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

「怖くて近寄りたくなかった。あいつは他の御曹司とは違う」

「え?」

「観察眼が鋭く、人をよく見てる。あの笑顔で皆を騙してる。怖いんだよ」

「怖い?明るい太陽みたいな人ですよね。でも、考えは先回りされます」

 高原はうなずいた。

「下手すると手のひらの上で回されかねない。だが最初に牽制しておけば今後その心配はない」

「牽制……」

 そういえば、雪が新しいところに取材へ行く度に、彼はひとつ自分の存在をわからせるような質問を加えた。

 つまり、バックに彼のような人がいることを教えて、相手に警戒させるためだったんだろう。

 初めて行く取材先で軽くあしらわれるということがなかったのは、実はそのせいだったんだ。

 狼の陰に隠れた子羊だった。

「どうした、そんな顔して……」

「チーフはずっと私を守ってくれていたんですね。私は子羊でした」

「子羊?ずいぶんと可愛くない子羊だけどな」

「チーフったら!ひどいです!」

「とにかく、あの表のことは社内外誰に聞かれても自分は知らないと必ず言え」

 目が怖い。頷いた。大きな手が私の頭をポンとたたいた。