敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です



 今日雪がインタビューする氷室商事の新副社長は、現社長の長男で御曹司だ。

 秘書は奥様で、取材する頃には産休に入る予定だと言われていた。

 時期が近くなり、スケジュールを確認しようと秘書宛にメールをした。

 返信されてきた新しい秘書の名前を見て雪は凍り付いた。

 福原真司、別れた元カレと同じ名前がそこにあった。

 当時彼がいた部署は確か営業だった。まさか今秘書課にいるとは想像もしていなかった。

 別れて数年経つので、異動したのも知らなかった。

 真司は雪の名前のついたメールを見ても、個人的に連絡してこなかった。

 気になるならこちらから確認すればよかったのかもしれない。でも勇気がなかった。

 仕事を優先して彼と別れた。今彼はどう思っているのか皆目わからなかったからだ。

 結局、そのまま今日を迎えた。変わらない立派なエントランスを見上げる。

 まさか仕事でこの門をくぐることになるとは、当時の雪は想像だにしていなかった。

 仕事終わり、夜にデートの待ち合わせをした時、実は何度かここへ来たことがあった。