敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

 「常務は驚いて私に連絡してきた。スポンサーなど別にどうでもいいが、きちんとすべきだな」

 九年前のことだ。

 医療の闇を暴いてひと月後。

 縁談のことで病院に呼び出され、奈美と会った。

 彼女を送っていく帰り際、急に記事の関係者から襲われた。

 俺は彼女を庇おうとしたせいでうまく逃げ切れず、腕を深く切られた。

 それ以降、許嫁の話がまた復活した。

 あちらの親も娘を庇ってくれた俺を気に入って乗り気になり、彼女はまた俺に執着し始めた。

 ここ最近は見かけなくなっていたので安心していた。

 断っても諦めないのは何故なんだ。母は俺が未婚だからだと言う。
 
 それにしてもやり方が卑怯だ。

「俺の周りは相変わらず物騒だと伝えて頂けますか?」

「透!」

「ご迷惑おかけしてすみません」

「いや、脅迫状も来ているし、それどころじゃないのはわかる」

「この山を越えたらきちんとします。すみません、忙しいので今日はこれで……」

 頭を下げて出て行く俺を、社長は呼び止めなかった。