敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

 雪はショックで少し開けた扉に背中を向けて座り込んでしまった。

 彼が取材先でモテるのは見慣れている。あのルックスだ。それに対外的にも有名人。

 だが、声をかけてきた女性とどうにかなったのを未だかつて見たことがない。

 忙しいのは理由のひとつだろうが、すでに三十代後半に入ろうとしている。

 浮いた噂どころか女性の影がないのは変だと思っていた。

 声しか聞こえなかったが、少し鷹揚で上品な感じの話し方だった。雪や小西とは大違い。育ちがいいのだろう。

 雪は今日抱き上げられ、部屋に連れてこられた時、一瞬、もしかしたらと都合よく考えた。恥ずかしい。

 いつの間にか、彼をこんなに好きになってしまっていたんだと認識した。

 何故か涙が出た。恋人と別れた時はここまでではなかった。

 胸がこんなに痛いのは久しぶりの感覚だった。失恋したんだとようやく認識した。

 玄関の開く音がして、ドアが閉まった。

 雪は化粧を直して、部屋を出た。

 何もなかったかのように装った。高原にそのことを聞く勇気はなかった。

 元気がないのを見て、また心配された。

 雪は心に鍵をかけた。