敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

 昔は厳しくされて、たまに見せてくれる優しさが本当に癖になった。

 今はずっと優しくされていて、なんだか別人と付き合っているような錯覚がたまにある。

 人とはおかしな生き物だ。

 スパイスが適度にあったほうが、甘みを感じやすい。

「……」

 まずい。

 彼の様子を見て気づいた。正直に言いすぎた。

「誰かさんのせいで怪我をした」

「え?」

「まずは責任を取ってもらおうか?俺の仕事を手伝ってもらう」

 びっくりした。

 いつだったかも聞いたようなセリフ。

「あのですね、一応私は今チーフなんです。忙し……」

「海江田の昇格試験をする」

「え?」

「お前のチーフとしての仕事をあいつに手伝わせて様子を見る」

「……まさか……」

 狼はきらりと目を光らせる。

「その間、雪は俺の下について記事を書く。ひと月でリスク管理を叩きこんでやるよ」

 たったひと月?何だか寂しい。

「どうした?嫌なのか?」

「ひと月なんてすぐです」

「え?」

「やっぱりお互い昇格しなければよかったですね」

「そうか?俺はそう思わない」

 高原は雪を抱き寄せた。

「昇格して、雪を部下から恋人にできたんだ」

「……あ……」

 高原はそっと雪の唇を塞いだ。