敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

「ありがとうございます。やっと師匠の足跡をたどりはじめました」

 彼はこのエントリーを何度も経験している。

 それどころか、最優秀賞を三度もとっているのだ。

「そろそろ身辺に気をつけないといけないぞ」

「え?」

「夜は絶対ひとりになるなよ。俺は必ずお前と一緒に帰る」

「まさか……それで最近無理して一緒に帰ってくれていたんですね」

「まあな」

「実は……最近誰かが私を見ているような気がして……」

「雪の警備を一か月前から頼んでいる。一人の時は警備員が後ろで見ているからな」

「そうだったんですか?!どうして教えてくれないの?!」

「無理をすると雪は倒れる。ストレスを与えたくなかった」

「あの……実は最近変な電話が来ていて……」
 
「何だと?どうして言わない?」

「だから、今話そうとして……」

 突然、彼が立ち止まった。

 そして雪に短く告げた。

「……雪、走るぞ」

「え?」

 急に手を握って走り出した。

 しかも、駅へ向かう道から外れていく。

 右に曲がり、左に曲がり、大通りを走ったかと思うと、横の細い路地へ入った。