敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です


 最近、雪の『日本貿易の功罪』が高い評価を受けている。

 有名な経済評論家が今年度のベスト記事に選んだからだった。

 それが発表されて以降、雪に名指しで取材依頼がくるようになった。

 アラサーで女性経済記者。

 希少価値もあり、話題になると思われたのか。

 だとしても、雪は嬉しかった。

 記者として指名される高原をずっと側で見てきた。

 羨ましいと思っていたし、いつか自分もと思っていた。

 しかし、ここひと月。

 売れっ子記者にも、気になることが出てきた。

「佐山チーフ、ジャーナルの佐藤さんの記事見ました?またですよ。性格歪んでます」

 経済ジャーナルの佐藤記者が、雪の古いコラムや記事を取り上げて、中傷するようになった。

 あの貿易赤字に関する記載が原因としか思えない。

 やはり彼を刺激し、もしかするとそのせいで何かあったのだろう。

 チーフが危惧していた通りになった。

 彼に言われていたので、そこまでのダメージはなかった。

 中傷はそのせいだと冷静に今も受け止めているつもりだ。

 だが、人に悪口を大きな声で言われるのは、精神的に結構堪える。