敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

 どうやら雪のあの記事のせいで、彼の論調の甘さが露呈し、企業側から取材を断られたらしい。

 彼は取引先を取り戻すため、雪を蹴落とす作戦に出たのだろう。

 俺から見れば、古い記事を批判するのはお門違いだ。

 経済は生き物だ。世界情勢が日本経済に大きく反映する。

 雪の昔の記事が今の情勢と合わないことはある。それは彼女に限ったことではないのだ。

 見る側が、彼の悪意に気づいていれば問題ないのだが、うのみにする人もまれにいる。

「社長」

「なんだ」

「この賞レース、経済ジャーナルの佐藤記者はエントリーされているんですか?」

「ちらっと小耳に挟んだ情報では彼は最近書いた記事のことで訴状が出ているらしい」

「……え?」

「エントリーどころじゃない。訴えられて負けたりしたら、記者生命も危うい」

 まずいな。備えが必要かもしれないと俺はその時思った。

 数日後、俺は雪には内緒で氷室を訪ねた。

「氷室。佐山の身辺を内密に警護したいんだが、いい会社に心当たりはないか?」

 氷室はニヤッと笑った。

「俺にできないことなんてない。わかっていて聞いているんだろう?」